『忍ばない!クリプトニンジャ咲耶』は、国内最大級のNFTコミュニティ「CryptoNinja NFT」発のテレビアニメであり、全25話の視聴権がNFTとして販売されるというユニークな試みに挑戦しています。
このNFTには二次流通(転売)やレンタル機能が付いており、購入者はデジタル上で“円盤”を所有する感覚を味わいながら、他者への貸し出しや売却も可能です。
この記事では、この新たな収益モデルを支えるRoadsteadプラットフォームの仕組みや、NFTアニメの事例・市場性、従来のDVD/Blu-rayビジネスの動向、そしてNFT視聴権のメリット・課題について詳しく解説します。

- NFTコレクター
- NFT投資で含み益200万円超
- NFT保有数:600点以上
- 音楽NFTコレクションを運営
- バンドマンでギターリスト
- 元ECサイト運営マネージャー:年商10億
Roadstead:視聴権NFTの発行・流通・レンタルを実現するプラットフォーム

Roadstead(ロードステッド)はブロックチェーンとDRM(デジタル著作権管理)技術を組み合わせた世界初のデジタルビデオトレーディング(DVT)プラットフォームです。
クリエイターが制作した動画を個数限定のNFTとして販売し、ユーザーは作品を視聴するだけでなくNFTの売買やレンタルを通じて流通に参加できます。
クリエイター(権利者)は販売後もNFTの二次流通から収益の一部が還元されるようルールを設定でき、そのルールはブロックチェーン上に記録・保証されます。
一方、動画データ自体はDRMで保護されており、NFT所有者以外による複製・改変は不可能となっているのが特徴です。
つまり、Roadstead上ではデジタルコンテンツでありながら
が整えられているのです。
この仕組みにより、クリエイター側は初回販売だけでなくファン同士の売買やレンタル時にも収益を得られるため、
ユーザー側も、購入した動画NFTを後に売却したり一時的に貸し出したりできるため、従来の配信サービスとは異なる所有感やコレクション性を楽しむことができます。
まさに「デジタル映像をDVDのように扱う」ことを可能にするプラットフォームと言えるでしょう。
「クリプトニンジャ咲耶」の視聴権NFT販売 – その内容と狙い

『忍ばない!クリプトニンジャ咲耶』では、テレビアニメ第1期(全25話)の映像視聴権を付与する「円盤NFT」が発売されました。
販売開始日は2025年1月25日で、価格は約2万円(0.04 ETH)、発行枚数は限定300枚です。

発売後1週間で完売!
このNFTを購入すると、ロードステッド上で第1話から第25話まで全話を視聴可能となり、さらに購入者限定特典として「CNPトレカ」と呼ばれる限定デザインのフィジカル・トレーディングカード(※夏頃に国内配送予定)が付属します。
NFTはRoadsteadを通じて転売やレンタルが可能であり、自分が視聴し終えた後は他のユーザーに貸し出したり、マーケットプレイスで売却してコレクターに引き継ぐこともできる仕組みです。


円盤NFTは従来のDVD-BOXに代わる商品
「円盤NFT」は、いわば従来のDVD-BOXに代わるデジタル版パッケージ商品と位置付けられます。
プロデューサーのイケハヤ氏(クリプトニンジャ咲耶製作委員会メンバー)は、
アニメDVD販売は、正直もう厳しい
引用元:イケハヤnote
「再生環境がない人も多く円盤販売はもはや厳しい」現状を踏まえ、物理ディスクに代えてNFTで映像権利を販売する新モデルに挑戦したと語っています。
- DVDの再生環境がない
- ストリーミングで事足りてしまう
そうした背景から、「円盤NFT」は製造・在庫・発送といったコストを省きつつ、デジタル商品として収支のハードルを下げられるメリットがあるとしています。
- 製造・在庫・発送といったコストが低い(在庫・発送コストはゼロ)
- NFTの場合、損益分岐点を下げて赤字のリスクが低くなる
なお、『咲耶』プロジェクトでは2023年にもジェネラティブNFT(咲耶や他キャラクターのデジタルアートコレクション)の販売を実施し、事前申込総額2億円超・応募倍率2.4倍という大きな反響を得ていました。
限定2000点のところに4800点以上の購入応募が殺到し、1点0.08 ETHという価格設定にも関わらず予定数を上回る申し込みがあり、即完売しています。


このジェネラティブNFTはキャラクター単体のコレクションアイテムですが、今回の視聴権付き「円盤NFT」はそれらとは趣旨が異なり、「アニメ本編を視聴できる権利そのもの」を商品化する世界的にも先駆的な試みです
NFT活用によるアニメ収益化の他事例と市場の反応
『クリプトニンジャ咲耶』以外にも、近年アニメ・映像分野でNFTを活用した新たな試みがいくつか登場しています。
ウェブアニメシリーズ「Stoner Cats」
2021年7月に本作の視聴パスとなるNFT(ネコのキャラクター画像)を1点あたり約800ドルで10,000点以上販売し、35分で約800万ドル(約11億円)を調達しました。
Stoner CatsはNFT保有者のみ視聴可能な完全クローズドな配信とされ、著名俳優陣を起用したことも話題になりました。
結果的にNFTは即完売し、シリーズ制作資金を見事に集めた成功例となっています。
米FOXテレビのアニメ作品「Krapopolis」


番組内の要素をモチーフにした限定NFT(“クラポピリオン”と呼ばれるキャラクター画像)を10,420点発行し、購入者にはエピソード先行視聴やメイキング映像へのアクセス、投票企画への参加権などを提供しました。
このように、大手もNFTをファンクラブやマーケティングに組み込む動きを見せており、新技術による視聴者コミュニティ形成の可能性が模索されています。
黒沢清監督の新作映画『Chime』


日本国内では、『咲耶』以外にロードステッドが手掛けたプロジェクトとして、黒沢清監督の新作映画『Chime』があります。
『Chime』は劇場公開に先駆けて999本限定で視聴権NFTを販売し、購入者はロードステッド上でいち早く作品を鑑賞できるとともに、NFTの売買・貸出を通じて他の観客に作品を届けることもできる仕組みでした。
ロードステッドはこの作品を自社オリジナル作品第1号として位置付け、日本の名監督による映画をNFT流通させるというチャレンジを行っています。
「映画をオンラインで販売し、購入者は鑑賞後にそれを転売したりレンタルで収入を得ることも可能」であり、各購入にはシリアル番号が付与され、取引時には興行主(権利者)に一定のフィーが戻る仕組みだと紹介されています。
これは正に『咲耶』の円盤NFTと同様のコンセプトであり、映画分野でもNFT配信モデルが始動していることを示しています。
NFT×アニメは始まったばかり
NFT×アニメはまだ始まったばかりであり、成功例も限定的ですが、CryptoNinja咲耶のように熱量あるコミュニティを背景にした作品では大きな経済効果を生むケースも出てきています。
もっとも、NFTブームが落ち着きを見せる中で一般アニメファンにどこまで浸透するかは未知数であり、「NFT原作アニメが実現した世界初のケース」として放送開始前に話題を集めた『咲耶』も、作品自体の評価やファン層の広がりについてはこれからの検証が必要でしょう。
とはいえ、従来になかった収益源を開拓しようとする動きは今後も続くと見られ、アニメ業界の収益モデル多様化の一環としてNFTは重要なキーワードとなりつつあります。
円盤ビジネスの衰退とアニメ業界の収益モデル変化


近年、DVDやBlu-rayといったパッケージメディアの市場縮小が目立ってきています。
実際、家庭で円盤を再生できる環境自体が減少傾向にあり、若年層を中心に「再生機器を持っていない」「配信で十分」といった声が増えています。
国内の映像ソフト売上は年々右肩下がりで推移しており、「円盤離れ」は明らかなトレンドです。
米国でも大手量販店Best Buyがパッケージソフトの販売終了を決めたり、ディズニーが一部地域で物理メディアの新規リリースを停止するといったニュースが報じられ、グローバル規模でフィジカルメディア市場が縮小しています。
アニメ業界の収益構造の変化
アニメ業界の収益構造も大きく変化しつつあります。
かつて深夜アニメなどではDVD/Blu-rayの売上(いわゆる「円盤売上」)が制作費回収の命運を握ると言われ、
「◯枚売れれば続編OK」のような基準が存在しました。
しかし現在では、配信プラットフォームへのライセンス提供による収入や、海外展開による版権収入、さらにはイベント・コラボカフェ・グッズ販売など周辺ビジネスの比重が増しています。
特に配信については、NetflixやAmazonといったグローバルサービスがオリジナルアニメに巨額出資する例も出ており、作品ごと一括で製作費をカバーする代わりに視聴独占権を与える、といった新たなモデルも一般化しました。
結果的に、パッケージソフトに依存しないビジネスモデルが徐々に定着しつつあり、ヒット作でも円盤販売数自体は昔ほど伸びなくても黒字化できるケースが出てきています。
マニア向けのグッズ
円盤メディアが完全になくなったわけではなく、コレクター向けの豪華版ボックスや特典付き初回限定版などは依然根強い人気があります。
ただ、その位置づけは「マニア向けのグッズ」に近づいており、大量に売れる商品ではなくなりました。
すなわち、本当にその作品を応援したい熱心なファンに高付加価値の商品として提供し、一方でカジュアル層には従来通り配信で気軽に観てもらうという住み分けです。
『咲耶』の場合も、一般向けにはAmazonプライムなど既存配信で視聴可能にしつつ、コア層に向けてNFTを販売しています。
この二層構造により、新規ファン獲得と収益確保の両立を図っているわけです。
NFT視聴権のメリット – ファンと制作者それぞれの視点から


NFT視聴権モデルには、ファン(消費者)と制作者の双方に利点が存在します。
ファン側のメリット
ファン側のメリットは以下があります。
所有欲とコレクション性
お気に入り作品の全話視聴権NFTを手に入れることで、デジタルデータでありながらあたかも限定版Blu-rayを所有しているかのような満足感が得られます。
ロードステッド上の自分のウォレットに作品NFTが並ぶ様子は、デジタルコレクションとしての喜びを提供します。
視聴の転売でコスト回収
従来、購入したDVDを見終わった後は中古ショップに売ることもできましたが、NFTでも同様にマーケットプレイスで転売できます。
人気が高まれば購入価格以上で売れる可能性もあり、単なる支出ではなく資産性を持ちうる点は大きな魅力です。
友人や他ユーザーへの貸し出し
NFTを一時的に他者にレンタルできるため、「貸し借りで作品を勧め合う」といった体験もデジタルで再現できます。
これにより作品の口コミや二次的なファン拡大にもつながるかもしれません。
購入者限定の特典
NFT購入者だけがもらえるフィジカル特典やイベント参加権、限定グッズ抽選券などを付与することも可能です。
『咲耶』の場合は限定トレカが付属しましたが、将未来的にはNFT所有者向けのプレミア試写会や制作者との交流イベントなど、さまざまな付加価値サービスが考えられます。
応援の証としての満足
好きな作品に直接お金を落とすことで製作陣を支援できる、いわば投げ銭やクラウドファンディングに近い満足感も得られます。
NFTなら支援の証が形として残り、コミュニティ内で誇れるステータスにもなり得ます。
制作者側のメリット
制作者側のメリットは、以下があります。
新たな収益源の創出
配信やグッズ以外に直接映像を販売して収益化できる手段が増えます。
しかも在庫リスクや製造コストが低く、少数限定販売でも利益を上げやすいモデルです。
ニッチな作品でも採算ラインを下げてチャレンジしやすくなるでしょう。
二次流通からの収益還元
NFTの転売時にクリエイターや製作者にロイヤリティが入る設定が可能なため、作品の価値が上がれば上がるほど継続的な収入が見込めます。
中古市場が活性化しても製作者側に一切リターンがなかった従来の円盤ビジネスと比べ、大きな違いです。
熱心なファン層の把握
誰がNFTを購入したか(ウォレットアドレスですが)や、どのくらいの価格で取引されているかといったデータが取得できます。
これによりコアファン層の規模や動向を把握しやすく、今後のマーケティングや続編企画の参考になります。
例えばNFT購入者に限定アンケートをとったり、ホルダー限定イベントを開催するといったファンサービスも可能です。
違法コピーの抑止
DRMとブロックチェーン認証により、正規購入者以外は視聴できず不正な複製配布も困難になります。
物理ディスクのようにリッピングや海賊版流通のリスクをある程度抑え込める点で、デジタル配信の弱点を補強する役割も果たします。
話題性とブランド価値
「世界初○○」といった形でメディアに取り上げられる機会が増えるなど、新技術への挑戦自体が宣伝になります。
NFTを活用することで作品に先進的・革新的なイメージが付与され、特にテクノロジーに関心の高い層へのブランディング効果が期待できます。
NFT視聴権モデルの課題と今後の展望


メリットが多く語られる一方で、NFT視聴権には課題やハードルも存在します。
ユーザー層の限定と技術障壁
現状では、暗号資産ウォレットの扱いやNFT購入手順に精通したユーザーは限られます。
一般のアニメファンにとってハードルが高く、「欲しいけど買い方が分からない」「仮想通貨は不安」という声も出るでしょう。
クレジットカード決済対応やUIの簡素化など、より間口を広げる工夫が必要です。
市場のボラティリティ
NFT市場は流行の波や仮想通貨相場の影響を受けやすく、タイミングによっては売れ行きが左右されます。
人気作品でも、市場全体が冷え込んでいる時期にはNFTが思うように捌けない可能性があります。
また価格設定ひとつでファンの受け止め方も変わるため、その調整は難しいところです。
作品評価との連動
NFTの価値は基本的に作品の人気やファン熱量に依存します。
アニメ本編の出来が良くなかったり話題性が低かった場合、せっかくNFTを発行しても需要が伸び悩むでしょう。
逆にNFT販売のために作品内容より投機性ばかり注目されるリスクもあり、コンテンツビジネスとして本末転倒にならないバランスが求められます。
レンタル機能の収益性
ユーザー間レンタルが可能になると、一つのNFTを複数人で使い回せるため、極端にいえば300枚のNFTがあれば全視聴者が順番に視聴できてしまいます。
もちろん現実には同時視聴の利便性を求めて購入する人がいますが、貸し借りが広がると新規販売数が伸びにくくなる可能性もあります。
ただロードステッドではレンタル料にも収益配分ルールを適用できるので、適正に設計すれば逆に収入源となる余地はあります。
プラットフォーム依存と長期保証
NFT自体はブロックチェーン上に記録され半永久的に残りますが、映像データのホスティングやDRM認証はロードステッドという一企業のサービスに依存しています。
極端な話、ロードステッド社が将来サービス終了してしまった場合、NFT保有者がどのように映像視聴権を行使できるかという問題があります。
業界全体で互換性のある標準ができればよいですが、現時点では各プラットフォーム独自仕様のため、利用者はある程度の割り切りが必要です。
法律・規制面のリスク
現在のところ日本ではNFTは主にデジタルグッズ・証明書として扱われていますが、海外の例にあるように証券的な性質を指摘される可能性もゼロではありません。
また転売益に課税がかかる、詐欺やハッキング被害のリスクなど、暗号資産特有の問題も伴います。
運用側は利用規約の整備や二次流通時の本人確認など、安心して取引できる環境づくりが求められます。
まとめ:DVD/Blu-rayによるアニメ収益化モデルはNFTへ
課題はあるものの、「デジタルコンテンツに希少性と所有権を持たせる」NFT視聴権モデルは、衰退する円盤ビジネスに代わる新たな収益源として大きな可能性を秘めています。
今回の『クリプトニンジャ咲耶』の挑戦はその先鞭を付ける意味合いがあります。
ファンにとってお気に入り作品を支える新たな参加方法となり、クリエイターにとっても継続的創作を支援してくれる仕組みとして、今後このモデルがどこまで普及するか注目されます。
『忍ばない!クリプトニンジャ咲耶』をきっかけに、生まれつつあるデジタル映像コレクション文化がどのように花開くのか、今後の展開を見守っていきましょう!

















